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は増加する方向に進むから、大きい粒子には互いに引き寄せられる力が働くことになる。このような現象は、「エントロピー力場」として説明されており、μm以下の粒子の配列化技術として注目されている(Dinsmoreら,1996)。
? オートマトン理論
コンピューターの生みの親と言われている米国の数学者フォン・ノイマンは、生体の自己複製作用を説明する単純な数学的モデルを提出した。セルオートマトンと呼ばれるモデルである(ジグムンド,1996)。
自己複製とは、自分自身の完全な記述を利用して新しい複製を作成することを意味する。機械は、自己複製が可能であるだけでなく、機械がそれ自身よりも複雑な機械を作り出すことが論理的に可能であることが明らかにされるようになった。最も簡単な一次元の例によって、自己複製が単純な物理的規則を繰り返し用いるだけで成立することを図4−30に示す(Jackson,1989)。
空間に一列に並んだ箱(“セル”)を考える。それぞれのセルは、0または1の二つの数字によって識別されている。それらの値は、同時に次のある特定のセルに隣り合う規則(ローカル規則)に従って時間ステップを経るごとに同時に更新されるものとする。

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この時、初期状態として{1011}という数列を与えると、時間の経過とともに無限個自己複製され、高次の空間パターンを形成する。以上は、全く数学的なモデルではあるが、生物の力を借りることなく、自己複製が可能であることを論理的に実証した一つの例であると言えよう。
フォン・ノイマンは、自己複製する機械を考えていく過程で、セル構造オートマトンの概念を具体的に発展させた。オートマトンとは、ある一定のインプットに対して所定の動作をするロボットを意味する。フォン・ノイマンの考えたオートマトンは、2次元のセル空間に成り立つものであり、依然として数学的な域を出るものではないが、次のような観点から普遍的な自己複製機械の実現が可能であることを明らかにした。
? 論理的普遍性:オートマトンは、いかなる普遍的な装備と機能を有するとき、有限の手順によって一連の論理的操作を遂行することが可能となるか。
? 製造可能性:オートマトンは、別のオートマトンによって原材料から組み立てることが可能か。

 

 

 

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